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2026.04.07
インタビュー

卒業生インタビューVol. 22 河村慎也さん・八木そのさん

「演劇はアイデンティティ」 舞台にとどまらず、子供向けワークショップなど演劇を通じマルチな活動を展開する劇団、南京豆NAMENAME。Ⅰ部演劇研究会(通称 イチゲキ)の出身で主宰の河村慎也さんと副主宰の八木そのさんは、大学時代から二人三脚で演劇と向かい合ってきました。

  

――法政大学卒業後から現在に至る経緯を教えてください。

河村:国際文化学部で学びながらⅠ部演劇研究会で活動し、2017年に大学を卒業し、サラリーマンになりました。しかし新生活が始まると大学時代に打ち込んでいた演劇から離れるにつれ、自分のアイデンティティを失ったような気持ちになり、2017年10月に劇団・南京豆NAMENAMEを旗揚げしました。その後演劇一本に絞ろうと脱サラし、劇団活動のほか、他劇団の客演や脚本提供などを行っています。

八木:キャリアデザイン学部を卒業し、モデルとして活動しながら南京豆NAMENAMEの旗揚げに携わりました。出産を機にモデルを引退し、育休後は会社員として仕事・家事・育児をしながら劇団の活動を裏から支えてきました。現在劇団では主に予算管理やプロモーション、マネジメントを担当しています。

   

――南京豆NAMENAMEはどんな劇団ですか?

河村:現在8名で活動しています。会話から発展していくドラマをエネルギッシュに演じる作風が特徴です。 旗揚げ公演は在学中の八木のアルバイト先だった居酒屋「串工房」で行いましたが、8年を経て昨年は小劇場の聖地ともいえる「新宿シアタートップス」での公演で満員御礼を果たせました。とはいえ演劇1本で生活ができるほど甘くなく、別の仕事との二足のわらじで活動しています。

八木:メンバーも様々で、仕事の傍ら空き時間を作って参加してくれる人や、いろいろな劇団で客演をしながら演劇一本で頑張っている人もいます。昨年頃から私も劇団へ、より本格的に参入し、河村がクリエイティブに集中できるよう支えつつ、いずれはクリエイティブ側にもより踏み込みたいと思っています。また舞台だけでなく児童館などでの子供向けワークショップなどにすそ野を広げることも試みています。演劇を通じて、子供たちの表現力にスイッチが入る瞬間はこちらも楽しくなります。

   

2025年5月 シアタートップスにて上演された
『僕は肉が食べたくて裸(ラ)』
の一幕
児童館で実施しているワークショップの様子

   

――演劇の苦労ややりがい、喜びについて教えてください。

八木:やはり苦労は費用面でのやりくりです。興行収入の黒字は現状微々たるもので、特に我々二人は、「おもろいもんをつくりたい」という情熱だけを燃料に、ほぼ無償で活動している状況です。また演者への出演料も本当はどんどん値上げをしたい気持ちもあるのですが、チケット収益だけでは限界があります。今はそれを打破すべく、アーカイブ映像の配信やグッズ販売、また、協賛企業を探すための営業活動も行っています。そんな大変さもありますが、演劇に関わる裏方も含めた人たちが「おもろいもんをつくろう」と共通の認識で一つの作品に向かう時の空気感は、普通の仕事では味わえない喜びがあります。

河村:コロナ禍で演劇界は大打撃を受けましたが、その中でもコンスタントに公演を続けて来られたことは自分たちの誇りです。私のやりがいや喜びは終演後のカーテンコールです。終演後、礼をして顔を上げた時の、お客さんの満足した顔は励みになり、何物にも変えがたい喜びだと思います。劇場が一体になれたような気がしますね。

幅広い世代と多様な活動背景を持つ
メンバーで構成される
南京豆NAMENAME

  

――大学時代の学びで今に繋がっていることはありますか?

八木:私はキャリアデザイン学部で多様性を学んだことが大きいと感じています。様々なバックグラウンドを持つ方々に直接お話を聞く機会が多くあり、自分が生きていくときにも他の人の人生を考える、という視点を持つことができるようになりました。例えば依存症の方からお話を伺う際は、周りも目を背けてしまうようなことを直接当事者から伺い、抱えていることと向かい合えたことは今も印象に残っています。

河村:国際文化学部だったので、SAでオーストラリアのモナシュ大学へ行ったこともありましたが、学部の学びではとても広い視野を得る経験を得られました。世界の歴史や他国の文化を知ることがもともと好きだったのですが、「誇るべき」ともいえる雑学を得られたことは、脚本を書いていて表現する際、引き出しとして役立っています。また佐々木直美先生の世界遺産ゼミではゼミ一体となって発表を作り上げ、演劇をつくる作業にも繋がっていると思います。

  

――今後の目標やビジョンを教えてください。

河村:今、まさに南京豆NAMENAMEの転換点に差し掛かっていると思っています。私と八木とは考え方も違い、ビジョンも違います。私はとにかく劇団を大きく、強くしていきたいという思いでひたすらやっていますが、八木は、広く多様な人と演劇をやりたいという思いがあります。一見食い違っているように見えますが、不思議とここにきてがっちりかみ合ってきた感覚があります。自分は主に現場でクリエイティブを、八木は経営やマネジメントの面でも劇団を支えてくれており、2人で馬車を引いているような感覚です。

八木:考え方の違いはお互いに理解しあっていますが、河村の作劇には絶対の信頼を置いていますし、私も河村からは信頼されていると感じます。ですので、私は河村と無限におもろいもんを作っていきたいと思っています。 同時に、本公演だけでなくプロ以外の方向けのワークショップを通じて、多様な人とのつながりの場所を作ることも目標です。

   

演出・脚本を担当する河村さん
創作の中心として作品づくりを牽引
経営やマネジメント面も担当する八木さん
ワークショップなどを通じ、人とのつながりを
大切にしながら劇団の活動を広げている

  

――若手卒業生や在学生に向けてメッセージをお願いします。

河村:学生であれば履修登録だとか、就活だとか、色んな選択を迫られる年代だと思いますが、若いうちに難しいことに挑戦しておいたほうが良いです。自分が今思っていますが、今までのキャリアの積み重ねは、今になって振り返ると、大学時代を中心に吸収してきたことが役立っていることが多くあります。ぜひ悔いのないように一つ一つの選択に向き合ってほしいと思います。

八木:大学に入ってからは、積極的にいろんなグループに飛び込んでほしい。コミュニティを多く持ってないと人は孤独になり、弱くなります。法政にはたくさんのコミュニティがあり、歓迎してくれる場所も多くありました。また今振り返ると、女性特有かもしれませんが、出産、家事育児以外のこと(私であれば演劇)に手を出す事は悪いことのように思ってしまう方も多いのではないかと思います。しかしあなたの気持ちを安定させて打ち込めることを、時間を見つけて、子供と一緒でもいいのでやってみることは大切なことだと思います。意外とどこにでも行けるものですよ。

河村:私はこれをご縁に、ぜひ学生さんや若手卒業生の皆さんと遊びたいです(笑)

八木:ぜひ私たちの演劇を同窓の仲間に見てもらって、コミュニティを広げてほしいです。

      

イチゲキ時代のお写真
(写真左端:河村さん)
(右から2人目:八木さん)

【プロフィール】
  • 河村 慎也(かわむら しんや)

劇団「南京豆NAMENAME」主宰

2017年 国際文化学部国際文化学科 卒業

  • 八木 その(やぎ その)

劇団「南京豆NAMENAME」副主宰

2018年 キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科 卒業

南京豆NAMENAME