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2024.02.09
インタビュー

卒業生インタビューVol. 17 髙橋 桜子さん

――まずは、自己紹介と法政大学卒業から現在に至る経緯を教えてください。

 髙橋桜子と申します。私は、2020年3月に国際文化学部を卒業し、インバウンド専門の旅行会社へ入社、その後転職し、2022年4月にDMOに入社しました。DMOとは、Destination Management / Marketing Organizationの略で、官民問わず幅広い関係者と連携し、観光地域づくりを推進する法人のことです。観光庁に登録されているDMOは計282件、候補地をあわせると300件を超えるDMOが全国にあります。(2023年9月26日時点)

国土交通省観光庁:観光地域まちづくり法人(DMO)について

 学生時代の留学経験から、日本の文化を特に発信したいと思うようになり、一番に観光業というお仕事を思いつきました。インバウンド専門の旅行会社に入社を決めた理由は、インバウンド向けにお寿司体験や茶道体験をコンテンツとして販売していたというのが、私の興味とマッチしたためです。

 2年目で希望の部署に異動した際、ガイド育成事業やコンテンツ造成事業を通して、DMOの存在を知りました。DMOは観光地と観光客を繋げる架け橋のようなものだと感じたのです。今まではガイド育成や旅行商品造成などの点で観光に携わっていましたが、お客様が観光地に訪れる前から訪れた後まで、観光地の中に入り込み仕事をしてみたいと思いDMOに転職を決意し、2022年4月から入社しました。現在は、青森県十和田市のDMOに勤務しています。

一般社団法人 十和田奥入瀬観光機構について

十和田湖

 

――現在のお仕事内容について教えてください。

 幅広い業務内容がありますが、わかりやすいものでいうと、ターゲットを定めてどのような人々にどのような商品を売りたいかなどを考え、観光コンテンツを造成し、PRしていくといった業務があります。他には、SNSでの情報発信や、イベントの事務局、お祭りの警備、市からの委託業務で観光案内所なども運営しています。

 BtoCの側面もありながらBtoB、さらにその中でもさまざまな業種の方とお仕事をします。旅行会社さんだけでなく、飲食業の方から宿泊、交通、金融など全業種と言っていいほどの方々と知り合う機会があります。また、会員の方々に支えていただいて成り立っている組織なので、地元の会員の方向けのセミナーを設けたり、悩みを聞いたりして地域の方達と一緒に盛り上げていけるように心がけています。観光客の方々だけでなく、地元の方々にとっても住みやすい観光地を目指しています。

――十和田市の魅力はどのようなところですか?

 十和田市は自然が豊かで、アートと自然を軸にまちづくりをしています。街中に現代美術館があったり、アート作品が点在していたり、美術館の中だけでなく街全体を美術館と見立てています。また、国立公園や温泉など、自然豊かなところも魅力だと感じています。

      

奥入瀬渓流(銚子大滝)          十和田湖早朝カヌーの様子

 

――印象に残っているお仕事は何ですか?

 今年度担当している、「SAVOR JAPAN」事業の関連のお仕事は印象に残っています。「SAVOR JAPAN」とは、地域の食・食文化の魅力で訪日外国人を中心とした観光客の誘致に積極的に取り組む地域に、「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」というブランドを付与する農林水産省の制度です。農業の担い手が少ないのですが、どのような方法でブランド化し、知名度を上げていくか、受け入れ体制としても農家さんの負担を軽くするにはどうするか(例えば、泊食分離する)などを考え、携わっています。この食に関するところは、学生時代のゼミでも興味を持っていた分野ですね。

 一昨年は丸々一年青森にいて四季をすべて体験したのですが、新緑の時期は午前と午後で葉っぱの色づきが違ったり、農作物もより旬の食材を意識して味わえるようになったりと、今までで一番、季節の変わり目がわかり四季を感じることができた一年であったと思います。

――お仕事での苦労、やりがい、喜びについて教えてください。

 様々な業種の方とお仕事をさせていただき、色々なお話を伺えることが新たな発見に繋がり、日々学びと気づきを得られることは喜びです。まだまだ、知識・経験共に不足しているため、色々な方々に助けていただいています。

 特に「SAVOR JAPAN」は、農家さんの立場ですと、自分たちの収穫作業を止めて観光客を入れることになります。正直、そのまま自分たちで収穫をして卸す方がお金になるかもしれません。でも、観光客の方に来ていただいて農業に触れる機会を持ってもらうことで、農業や食文化に興味を持ってもらえたらということで協力してくださっています。農家さんとお話する中で趣旨を理解してもらう等、日頃からコミュニケーションをとって、信頼関係を築くことで実際のツアーに繋げることができます。この人になら任せても良いと信頼してもらえたら嬉しいです。

 

――ここからは、学生時代についてお話を伺いたいと思います。留学経験やゼミについてぜひお話を聞かせてください。

 高校はスイスにある日本人学校で学ぶことで、日本の文化をヨーロッパの人たちにもっと知って楽しんでもらいたいと思うようになり、文化を幅広く様々な角度から学べる国際文化学部に入学。ドイツ語を学び、2年次のSA(留学)で再びスイスに行きました。ドイツ語は難しかったのですが、英語と単語や文法で似ている部分もあり、比較しながら学んでいました。留学先には、韓国、オーストリア、フィンランドなどたくさんの国籍の子がいました。クリスマスの日は、同じ寮の寮生と自分の国のご飯を作ってお祝いしたのが思い出です。

 3年次は、観光と移民の曽ゼミに所属し、観光促進における日本食の可能性について研究しました。文献を通して日本食の歴史を学び、実際のフィールドワークでは、日本食を提供しているお店の方に外国人のお客様の受け入れにあたっての取り組みや、外国人観光客にどの日本食が好きかインタビューをするなど、日本食を提供する側、される側の両方に焦点を当てて調査しました。4年時には、インバウンドでもヴィーガンやベジタリアンの方が増えている一方で、対応・受入はまだ不十分なのではないか、日本食の中で、精進料理との相性がよいのではないかといった仮説を立て、調査し、日本食の根強い人気を実感しました。文献だけでなく、フィールドワークを通しながら、様々な角度から調査し、楽しみながらのゼミの学びは良い思い出となっています。

――課外活動についてもぜひ聞かせてください。

 オープンキャンパスのスタッフとして活動して270人一丸となって、活動したことです。3年次には、学部企画15人のリーダーを担当しました。今までリーダーを経験したことがなく、どちらかというと裏で支える方が好きだったので、どんなリーダーになっていけばいいのかなと考えていました。学年の違いや経験者と新規の人との交流は意外と難しいのかなと感じ、また、4年生は就活でミーティングに参加できないことも多く、限られた時間の中でどのようにメンバー同士コミュニケーションをとっていくか、不安なことがないかなどを気にしていました。

 みんなを引っ張っていくかっこいいリーダーを目指していたのですが、自分なりにスタッフが楽しく活動できるようにと考え、メンバー一人ひとりと向き合い、活動する中で悩みはないか等聞く機会を設けました。来場者の方々に満足いただくためには、まずはスタッフがどうやったら楽しめるのかを考え、支えていくリーダーもありかなと考えていました。結果的には、かっこいいリーダーとはなれず、メンバーや他企画のリーダー、代表陣たちに支えられてばかりのリーダーでしたが、とても良い経験をさせてもらいました。

――学生時代に様々な経験をされている髙橋さん。法政大学での学びは、現在どのように活きていると感じますか?

 いろいろな場面で、自分の軸や基礎は学生時代の経験から成り立っていると感じます。たとえば、留学先での異文化交流では、多様な価値観に触れ、価値観の違う人たちとのコミュニケーションをすることで、たくさんの学びがありました。この体験は、先ほどお話した地元の人とのコミュニケーションにつながっていると思います。言語は同じですが、文化が違うと価値観が違うこともあるので、“違い”を楽しんでコミュニケーションをとっていく姿勢を心がけています。日本食や観光、インバウンドに興味があったため、ゼミではアカデミックな面から観光を学んだことが現在に活きています。オープンキャンパススタッフの経験では、来場者一人一人の知りたい情報に対して、より良い情報を提供できるように心がけていました。それぞれに丁寧に向き合って様々な人のニーズを満たすということは、現在の仕事でも変わらないのかなと思います。

――ご自身の今後の目標やビジョンを教えてください。

 旅行者と地域事業者・住民との架け橋となる存在になりたいです。また、地域の方々との交流、豊かな自然や食により、観光地での特別な時間の価値を体感してもらい、観光客により魅力的な地域と感じてもらえるようなコンテンツを提供することで、観光客(外部)によって、地域の良さを住民も感じ、住んでよし、訪れてよしの、観光を軸に地域づくりを行いたいです。

 今後は、市場やニーズを分析・把握するためのデジタルマーケティング力、ターゲットの設定や効果的なプロモーションの方法を学び、地域の魅力を体感できる観光コンテンツを造成していきたいと思っています。

――若手卒業生や在学生に向けてメッセージをお願いします!

 学生時代というのはその時しかなく、社会人になって戻りたくても戻れないものです。ありきたりな言葉になってしまいますが、在学生の皆さんが、今しかない学生生活を楽しみ充実した日々を送れるよう応援しています。自分自身にとって、後悔のないよう、大切に過ごしてもらえたら、嬉しいです。私自身、キャリアやプライベートで悩むことや迷うことも多いですが、学生時代の思い出、経験や出会った人々に支えられていると感じる瞬間は多いです。

 何でもないことで笑いあえる友人と美味しいご飯を食べたり、旅行へ行ったりと、息抜きをすると、話題は変わっても関係性は変わらないのかなと思うとこれからが楽しみです。学生時代に戻りたいなぁと思ったこともありますが、今を楽しみたいと思っています。

 大学に限らずですが、今まで共通の友人や先輩、同じ学部やゼミ出身の方と、思いもよらぬ場所で出会う機会も多く、ご縁に恵まれていて、嬉しい、世間は狭いなと感じる機会もありましたので、どこかでご縁があり出逢うことがありましたら、よろしくお願いいたします。笑

【プロフィール】

髙橋 桜子

一般社団法人十和田奥入瀬観光機構

2020年3月 国際文化学部国際文化学科卒業