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2023.04.06
インタビュー

卒業生インタビューVol. 15 落合 洋祐さん

――まずは自己紹介と法政大学卒業から現在に至る経緯を簡単に教えてください。

落合 法学部政治学科 2015年卒、落合洋祐と申します。
私は、逆境に立つ人が十分に支援を受けられる社会を実現させたいという思いから、大学では社会的弱者の意見を政治にどう反映させていくかということを意識して学んでいました。
卒業後のファーストキャリアは、逆境に立つ人をはじめとする多くの人に必要な情報をキャッチーに届け、世の中に広く問題を提起できる広告会社を選択しました。
その後、自身が体調を崩してしまった経験から、逆境に立つ人の中でも健康上の理由により苦しむ人の力になりたいと考え、社会保険の一翼を担う警察共済組合へ転職しました。
現在は、社会保険の枠を超えて、様々な角度から健康上の理由で逆境に立つ人の支援を行いたいと考え、東京都庁の福祉保健局で業務を行っています。

――「逆境に立つ人を助けたい」と考えるようになったきっかけは何でしょうか?

落合 高校時代の悩みがきっかけです。進学先の高校の校風が自分とはあまり合わないと感じることがよくありましたが、高校は義務教育ではないので、合わないからといって登校しなければ、当然ながら留年してしまいますし、転校も簡単にできることではありません。
高校においては、ミスマッチが起きた際の支援制度というものがないためにどうすることもできず、中学時代の友人達が青春を謳歌する中で、「自分は何をやっているのだろう」と日々悩んでいました。
そういった自分自身の悩みがきっかけとなり、逆境に立ったとき、十分に支援が受けられる社会を作りたいと考えるようになりました。
高校時代から現在に至るまで、逆境に立つ人を助けたいという軸を持ってキャリアを歩んできているのではないかと思います。

――先ほど、逆境に立つ人の中でも、特に健康上の理由により苦しむ人の力になりたいと考えたことから警察共済組合へ転職されたとおっしゃっていましたが、警察共済組合から東京都庁の福祉保健局へ転職した際のことについても教えていただけますか? 

落合 警察共済組合の主な仕事は、警察関係者の方に保険証を発行することです。3割の負担額で治療を受けることができる制度の運営に携わることは、私自身の目標を達成する一つの手段でした。
ただ、別の言い方をすると、警察共済組合ではそれ以上のことはできません。警察の業務は激務であり、離職率が高い傾向にあります。中には体調を崩してしまい、4月に入職して保険証を発行したにもかかわらず4月中に辞職し、保険証を返納しなければならない方もいらっしゃいます。
そうすると、次になかなか再就職ができず心のバランスを崩してしまう等、新たな逆境に立たされてしまうことが考えられます。それにもかかわらず、共済組合の立場では、そういった新たな逆境に立つ方に対してはアプローチすることはできません。
この点にもどかしさを感じ、より幅広い角度から、健康上の理由により逆境に立つ人を助けたいと考え、都庁に転職しました。
都民に対する様々な行政サービスを提供する都庁であれば、保険証の発行に限らず、健康上の理由で定職につくことができない若年者の就労支援といった、様々な角度からアプローチすることができると考えた結果でした。

――それでは、現在のお仕事内容について教えてください。

落合 現在は福祉保健局の中の国民健康保険課に所属しています。
国民健康保険は区役所・市役所、それからいくつかの関連団体で運営されています。私自身は、所管している関連団体への補助金の執行や監査の実施といった業務を中心に、有識者委員会の運営や国・市区町村との調整といった業務を担当しています。

――都庁でお仕事される中でのやりがいや苦労を感じるエピソードがあれば教えてください。

落合 所管団体に対する監査を実施する際に、まずは監査計画を策定する必要がありますが、この業務はとても大変です。
都庁内においても関連部署が多くあり、自分たちの部署の意見だけでは計画を立てられない部分があります。現下の情勢を踏まえて、どういったテーマで、どういった項目を中心に監査するかという意見調整は難しいです。
また、所管団体への補助金に係る予算要求に当たっては、その必要性や積算数値の妥当性について厳しく財政部門から問われます。その際に、関係職員とも連携しながら説明を行い、予算要求額が認められたときには非常に達成感がありました。
大変ではありますが、他の職員とも協力し、これらの業務を遂行することにはとてもやりがいを感じています。

――監査で庁内の他部署との調整が難しいとのことですが、どのような点において交渉が必要になってくるのでしょうか?

落合 特に、どの項目を監査の重点項目とするかという点です。この点については他部署との調整だけでなく、課内の他の係とも調整が必要となり、自分としては「こういう項目を重点的に監査する方がいいのでは」と思っても、別の意見が出ることももちろんあり、他部署との調整の前に自部署間での意見調整が必要になります。

――大学時代、講義やゼミなど学びの面で力を入れて取り組まれたことがあれば教えてください。

落合 学びの中心はゼミ活動でした。私が所属していた政治理論のゼミは2時限連続の構成でした。
一限目は「自由と平等は両立できるか」「デザイナーベイビーの是非」「功利主義は適用可能か」など、持ち回りで各々が興味のあるテーマを決めて事前に学習し、学生だけで自由にディスカッションを行っていました。
二限目は教授も参加して、指定された課題図書に対して、ディスカッションを行うという内容でした。
このようなゼミ活動の中で、人はそれぞれ興味を持つテーマも違えば、同じテーマについて議論しても、さまざまな意見を持つということを実感しました。
ゼミをとおして多様な意見や価値観に触れ、自身の見識を広げるとともに、思考力を高めることができたのは貴重な経験でした。

――サークル活動など課外活動の面で力を入れて取り組まれたことがあれば教えてください。

落合 課外活動は積極的に行っていました。その中でも、社会問題の解決策を立案するプロジェクトに参加して、他大学の友人たちと泊まり込みでディスカッションを行い、最終的に有識者の前でプレゼンを行ったことが印象に残っています。
また、自主マスコミ講座に参加して、意識の高い学生たちと交流し、グループワークやプレゼンを行うといった経験を積めたことは、就職活動を有利に進めるということだけに留まらず、社会人としての基礎力を培うことにつながったと思っています。
その他にも、吹奏楽サークルに所属した経験、法政大学の「学生の声コンクール」にエッセーを投稿して賞をいただいた経験など、様々なことに挑戦しました。

――お話の中で出てきた、社会問題の解決策を立案するプロジェクトにはどのようなきっかけで参加されたのでしょうか?

落合 そのプロジェクトは、ある企業が学生向けに行っていたプロジェクトで、参加するきっかけはポップアップ広告でした。
何となくネットを見ていたら「未来を作る人にならないか」というキャッチフレーズのポップアップ広告が出てきて、興味を持ってタップした先にあったのが、このプロジェクトの特設サイトでした。 そして、このポップアップ広告は広告業界を目指すきっかけにもなりました。
もともと、逆境に立つ人たちに必要な情報を届けられるというところからマスコミに興味を持ち、自主マスでは1年時に基礎コース、その後は新聞コースに所属していましたが、この広告を見てプロジェクトに参加した経験から、広告は多くの人々に必要な情報をキャッチーに届けられる媒体であることを実感し、魅力を感じるようになりました。

――学びの面や課外活動の面でさまざまな経験をお持ちですが、その中で得た知見が今のお仕事に役立っているということはありますか?

落合 大学で学んだ憲法学や政治学、行政学といった専門知識はもちろん日々の業務に直接的に生かすことができています。しかし、何よりも役立っているものは、「相対化する」という姿勢です。先ほどお話ししたゼミや課外活動では、様々な他者とグループワーク、ディスカッションを行う機会がたくさんありました。
その中で、多くの人の意見に耳を傾け、一つの考えを絶対視せずに相対化して思考するということの大切さを学び、相対化する姿勢を自然に身につけることができたと思います。
これは常に公正中立に物事を捉え、一部の利益のためでなく、すべての国民の幸福のために業務を行う公務員にとって必須の姿勢であり、国や市区町村間の多様な意見を伺い、連絡調整を図っていく都道府県庁職員にはとりわけ必要とされるものであると考えています。

――ご自身の今後の目標やビジョンを教えてください。

落合 高校時代からずっと考えてきた「逆境に立つ人が十分に支援を受けられる社会」の実現に向けて、今後も福祉保健政策に携わりたいと考えています。
これまでは自身の業務経験を生かせる社会保険の分野で業務を行ってきました。
今後は社会保険の分野以外にも、病気や障害を持った方の就業支援や、離職してしまった若年層の再就職支援、健康上の問題で通学に支障をきたしている子どもの就学支援といったさまざまな角度から、逆境に立つ人が支援を受けられるような社会の実現の一翼を担っていきたいと考えています。
法政大学で学んだ専門知識と、何事も相対化するという姿勢を生かして、今後も社会をより豊かなものにするため精一杯業務に取り組んで参ります。

――最後に、社会人8年目ということで年下の後輩もだんだん増えてきたと思うのですが、若い世代に対して先輩からアドバイスをお願いします。

落合 主観かもしれませんが、法政の学生の中には最初から自分の限界値を決めつけてしまっている方が一定数いるように感じます。しかし、社会で必要とされる力は受験勉強のような単純な学力だけではありません。
法政大学の一番いいところは、学生の自主性が尊重されていて、学びや課外活動においてさまざまなことに自由にチャレンジをすることができる「自由の学風」だと思います。
自分の限界値を決めず、この学風を活用して大学時代に多くのことにチャレンジして自分自身を高めていくことが、将来の自分の夢や目標の実現につながっていくのではないかと思います。
是非、学生の皆様には、この貴重な大学時代に様々なことにチャレンジしてほしいと思います。

【プロフィール】

落合洋祐
東京都庁 福祉保健局
1992年生まれ。2015年に法政大学法学部政治学科を卒業。